SaaSの次の潮流BPaaSとは?【kubellが語る】

目次

FanGrowthはリリースから2周年を迎え、皆様のご支援により、今や1000社以上の企業様にご利用いただけるプロダクトへと成長いたしました。

そこで、日頃の感謝を込めて、FanGrowthをご活用いただき、優れた取り組みをされている企業様を表彰し、その成果を広く共有するため、「FanGrowth Award 2024」を開催いたしました。

本イベントは、第1部がウェビナーを「学ぶ」、第2部がウェビナー担当者と交流することをコンセプトに実施されました。当日はAward表彰に加え、Award受賞者である株式会社識学の岩下様によるLTや、Peatix Japan株式会社共同創業者 取締役・CMOの藤田氏、株式会社kubell  執行役員  兼インキュベーション本部長の桐谷氏による基調講演など、BtoB業界のイベント・BPaaSの潮流について学べる有意義なイベントとなり、150名以上の参加申し込みがありました。

※Peatix 藤田氏の基調講演はこちらの記事からご確認ください。

⇒これからのBtoBイベントのあり方~ターゲットに選ばれるイベントをどう作るのか?【Peatixと語る】


BPaaS(ビーパース)とは「Business Process as a Service」の略称で、SaaSやITツールを活用し、業務の効率化を図った上で、業務プロセスそのものを提供するサービスを指します。

昨今、AIの普及などがきっかけで、DXが進む中で、新しい概念としてのBPaaSをよく耳にすることが増えました。

今回は、「Chatwork アシスタント」などのBPaaSサービスを幅広く展開されている株式会社kubellの執行役員 兼 インキュベーション本部長、桐谷氏の基調講演をピックアップさせていただきます。


BPaaSカンパニーを目指すkubellが考えるSaaSの成長戦略の潮流

我々は、2024年7月1日に、Chatwork株式会社から株式会社kubellに社名を変更いたしました。もともとSaaSの企業でしたが、BPaaSカンパニーを目指すという思いを込めて、社名を変更した次第です。

現在、「Chatwork」(ビジネスチャットツール)は国内で約59万社にご利用いただいているSaaS事業です。その「Chatwork」上で、経理や労務などのさまざまな業務を依頼できる「Chatwork アシスタント」というBPaaS事業を展開しています。

SaaS(ソフトウェア企業)の成長戦略には、6つの大きな潮流があると考えています。

1つ目は「コンパウンドスタートアップ」です。これは創業時から1つのプロダクトやサービスに限定せず、複数のプロダクトやサービスを提供する企業のことを指します。例としてはLayerXや、海外のRipplingが挙げられます。

2つ目は「M&A」です。有名な企業としてはSHIFTが代表的な存在でしょう。M&Aによって成長する戦略を取っている企業が増えています。

3つ目は「FinTechとの接続」です。SaaSとFinTechを組み合わせた「エンベデッドファイナンス」など、金融技術を取り入れる企業が増えてきている印象です。

4つ目は「ハードウェアとの接続」です。Sansanやセーフィーのように、名刺をスキャンしてデータ化したり、カメラの画像を解析したりといったハードウェアとソフトウェアを接続する事例が増えています。

5つ目は「ロールアップ」です。特定の業界で一つのプレイヤーとなり、他の企業をまとめ上げ、プラットフォーム化していく戦略です。

6つ目は「BPaaS(Business Process as a Service)」です。日本国内市場は海外に比べてTAM(Total Addressable Market)が小さく、一つのプロジェクトでの成長が限られることが多いです。そこで、BPaaSのように新しいビジネスモデルが今後の展開の中で重要な役割を果たすと考えています。

BPOの現状から見えてきたBPaaSの可能性

我々kubellが考えるBPaaSとは、型化されたプロセスと人材を含むオペレーションをクラウド上で提供するビジネスモデルです。

この話を進める前に、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)について触れておきます。主に大企業のバックオフィス、コールセンター、ヘルプデスク業務など、一定の規模以上の業務ボリュームがあり、かつその業務がノンコア領域(外部に委託しても企業の競争力の源泉ではない領域)である場合に、BPOの活用が2000年代頃から急速に進んできたと考えています。

現状のBPOは、企業規模が小さいほど利用割合が減少しています。


理由はいくつかありますが、先ほど述べたように、業務のボリュームが少ないため、1社1社にオーダーメイドのシステムを設計・導入し、運用支援を行うと、ベンダー側にとってはビジネスとして成立しにくいのです。また、ユーザー側にとっても料金設定が高くなり、手が出しづらいという構造になっています。

しかし、企業の規模に関わらず、BPOの利用意向は同程度であり、特に従業員が少ない企業ほど、人手不足の解消を目的として外部人材の活用に対するニーズが高いと感じています。

そこで我々は、BPaaSというモデルに行きつきました。

BPaaSは、業務の小さなボリュームを安価に提供することが課題ですが、これを実現するために、アクセンチュアのような総合コンサルティング会社のビジネスモデルを参考にしました。

コンサルティング業界には、戦略策定、業務改革、システム導入、そしてBPOという4つの主要な領域があり、戦略コンサル、ITコンサル、Sier、大手BPOと、それぞれが異なる部分をカバーしています。総合コンサルティング会社は、上流の戦略策定を比較的安い金額で引き受け、その後、BPOまで一貫して対応することで、全体をカバーしながらクライアントをロックインしているというビジネスモデルです。

全体像として非常に理にかなったモデルだと思いますが、一方で、我々が目指しているのは、比較的小規模な業務を大量に引き受けるという形です。そのため、戦略策定に数億円かけてくれるような企業は少なく、この点が課題として残ってしまっています。

もう一つ参考にしたのは「シェアードサービス」という概念です。グループ企業がノンコア業務を集約して効率化する仕組みで、2000年頃から大企業が専用の子会社を設立して運営している事例が多く見られます。この考え方をもとに、共通業務をクラウド上で効率化することが、BPaaSのヒントになりました。


徹底的な構造整理によって見えてきたBPaaSのポジション

ここまでの話を図にまとめると下図になります、左側に行くほどカスタマイズが必要なオーダーメイド型のサービスになります。中央は、汎用的な要素がありつつ、一部カスタマイズが可能なサービス。そして、右側は完全にカスタマイズ不要で、定型化されたサービスが提供される形です。右側に行けば行くほど、スケールしやすく、提供価格も安くなるのは当然のことです。

反対に、左側に行くほどオーダーメイドの要素が強くなるため、提供価格も高くなっていく、そういった構成になっています。

また、上下の軸では、オペレーションによる最適化か、システムによる最適化かという点で分かれています。

オペレーションによる最適化は労働集約性が高くなります。一方、システムによる最適化では、それを使いこなせる人材がいるかどうかが問題となり、導入のハードルが高くなることがあります。


また下図は、既存のビジネスモデルをマッピングしたものです。左下は、システムを企業ごとにカスタマイズして提供する「オンプレミス型システム」のイメージです。

右下に位置するのは、汎用的な形で提供されているシステム、つまりSaaSです。そして、右上の部分に到達できるかどうかが、BPaaSのポイントになります。BPaaSは労働集約型で、BPO的な要素を持ちながらも、完全に型化された汎用的な形で展開できるかどうかが非常に重要です。

プロフェッショナルサービス的なアプローチはスケールしにくく、事業としては厳しい展開になりがちです。そのため、汎用化や型化が事業の成功において大きな役割を果たすと考えています。

SMB(中小企業)に限らず、広く展開していくためには、システムによる展開には限界があり、我々もSaaSの会社として「SaaSだけでは厳しい」と感じています。そこで、オペレーションによる解決でハードルを下げつつ、右上を目指す必要があるという結論に至ったのです。


「作業を効率化する道具」ではなく、「効率化された結果出てきたアウトプット」を目指すBPaaS

DXやSaaSのマーケティング担当者は、ユーザーの導入や活用が進まないという共通の課題を抱えていると思います。弊社も自社のユーザーを分析しましたが、まず「課題を認識しているかどうか」と「その課題を解決する能力(ケイパビリティ)を自社で持っているかどうか」という2軸で分類しました。

課題を認識し、かつ解決能力があるお客様に対しては、ツールをしっかりご紹介すれば、すぐにサービスやソフトウェアの導入が進んでいく、そういったセグメントだと考えています。一方で、課題は認識しているものの、解決する能力が自社にない企業も多いのではないかと思います。

例えば、興味はあって資料をダウンロードするものの、「自社では使いこなせないかもしれない」と感じるお客様がこれに当たります。

さらに、課題の認識すらしていない層も存在します。例えば、「DXって何ですか?」や「うちは関係ない」といった反応をする企業です。この2番目と3番目の層が、意外に大きいのではないかと考えています。

BPaaSは、これらの層にも対応できる領域であり、BPaaSの運用を含めることで、結果的にソフトウェアが導入されるためには、より広い範囲にアプローチしていく必要があると考えています。

キャズム理論に基づくと、日本市場では、イノベーターやアーリーアダプターに対してSaaSの導入は進んでいるものの、手詰まり感が出てきているのも事実です。アーリーマジョリティやレイトマジョリティといったメインストリームに到達するためには、プロセス全体を巻き取る形で対応した方が良いのではないかと思います。

どの段階にいるユーザーに対してマーケティングを行っているのかを見極め、その層に適したアプローチをすることが重要だと考えています。

このあたりは、社内のセールスチームでもよく話題にしています。「そもそもBPaaSって何だ?」という疑問から始まり、SaaSが普及している中で、「結局使える人がいない」「業務のオペレーションに組み込めない」といった課題が多く出てきます。

そこで、我々が「もう全部任せてください」という形で、オペレーション全体を整備したサービスを提供しています。

もともと、企業が自分たちで全部作らなければならなかったものを、IaaSの登場によって一部だけお客様側で対応すれば良いという形で負担を軽減しました。これをさらに進めて「すべてを包括的に提供しましょう」というのがBPaaSの概念だと考えています。

最終的にまとめると、多くの企業が作業効率化のツールや道具を一生懸命に売ろうとしていますが、それ自体は手段であって目的ではないんです。

実際、マーケティングの手法やクリエイティブの作り方でも同じことが言えます。企業が求めているのは、ツールそのものではなく、作業が効率化された結果としてのアウトプットです。

どんな領域でも同じで、例えば勤怠管理サービスを例にすると、企業が求めているのは「勤怠管理ツール」ではなく、勤怠管理がスムーズに行われ、結果としてコストが下がることです。DX推進も同様で、それ自体は手段であり、最終的な成果が重要です。つまり、道具自体を求めているのではなく、効率化された結果としてのアウトプットが求められているのです。

そういった背景の中で、我々はBPaaSを展開しています。これは我々が特に意識している重要なポイントだと思っています。

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